鬼の子
「・・・・ちょっと!茜?」
綱くんが去っていった後も、私は中庭のベンチに座ってぼーっとしていたみたいだ。声を掛けられて、ようやくその事に気付いた。
心配そうに駆け寄ってきたのは、お父さんの主治医と話すと言っていた、お母さんだった。
お母さんの顔を見たら、今まで我慢していた何かが崩れ落ちるように涙が溢れ出した。
「・・・・うっ、う、うわーん」
子供のように声を上げながら号泣する。そんな私の隣に、何も言わずにただ、座っていてくれた。
今「どうしたの?」と聞かれても、なにも答えられないので、ただ座っていてくれる事に、ホッとした。