鬼の子
16 呪の真実
⋆⸜꙳⸝⋆
家に帰り部屋で声を押し殺して泣いていると、トントン、と部屋のドアがノックされた。
「茜、ちょっと話せる?」
「・・・・・・う、うん」
神妙な面持ちで部屋に入ってきたお母さんは、私の泣き腫らした目をじっと見つめて言葉を放つ。
「茜、最近泣いてるみたいだけど、なにかあった?」
お母さんに、綱君のことを言っていなかった。
好きな人がいることも、好きな人が癌だということも、言えないでいた。
言わなかった理由は、心配をかけたくなかった。
お父さんが癌と分かった時のお母さんの心労具合を見てるので、これ以上負担をかけたくなかったら。
「う、うん。ちょっとね」
「最初はお父さんの病気のことで泣いてるのかと思ったけど、きっと、違うわよね?」
「・・・・もう少し待ってもらってもいい?」
自分の中で、もう少し整理してから、きちんと話したいと思った。
「分かった。茜が言ってくれるまで、お母さん待ってるから」
「うん。ありがとう」
「お母さんね、茜に話さなければいけないことがあるの」
「・・・どうしたの?」
お母さんの放つ空気感が、ただの井戸端会議ではないことを教えてくれている。