鬼の子



神妙な面持ちでお母さんはゆっくり話し出す。


「お父さんね、手術で癌細胞を取り除けることになったの。まだ初期だったから、心配もそんなにしなくて良さそうって」

「・・・良かった」

「手術の日程が、近々で取れたから。今日入院して、明後日手術になったの」

「・・・不安にならなくて大丈夫なんだよね?」

「主治医の先生は、経過を見てみないと分からないけど、希望を多く持ってていいって」


お母さんの話を聞いて、私の胸のつかえが1つ取れたような、心がホッと緩んだのが分かった。

お母さんの安堵のこもった声は、荒れていた心に束の間の平穏を与えてくれた。


「お父さんは大丈夫だから、安心してね。
・・・・・それでね、もう一つ、茜に話さないといけないことがあるの」

「どうしたの?そんな真剣な顔して・・・」


あまりにも神妙な面持ちで言うので、不安や恐怖、胸に重苦しいものが広がっていく。

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