鬼の子
離れた場所から茜の悪口ですと言わんばかりに私に視線を向けながら言っている。
悪口を言われるのは心が痛むが、みんなの気持ちも分からなくはない。
唇に触れたら人を殺す、殺人鬼が同じクラスにいて・・・・・、
殺人鬼と同じ空間を過ごし、勉強も共にしていかなければならないなんて・・・・・。
悪口を言ったり、嫌がらせもしたくなるだろう。
だけど、私は殺す気なんてないし、誰も殺したくもない。意味があるのかは立証されていないが、口元を隠すためにマスクを年中つけている。
暑い夏の日だって、マスクの中は蒸れて苦しいが我慢して着けている。人知れず努力をしているけど、そんな小さな頑張りは誰も認めてはくれなかった。
———私だって殺人鬼になんてなりたくない