鬼の子
「容態が良くない」この言葉が頭の中で繰り返される。呼吸が乱れて、息をするのがやっとだった。
「茜ちゃん、大丈夫?ゆっくり息を吸って?」
息子の容態が悪くて、他人の心配なんてしてる場合じゃないはずなのに、動揺で息を吸うのがやっとの私を気遣ってくれる。
そんな姿を見て、自分は何をやってるんだろう、と猛烈に反省をする。
「あの・・・・・、お願いがあります。綱くんに会わせてもらえませんか?」
「でも・・・・・」
「ここで帰ったら、後悔してしまう気がするんです」
無茶なお願いに、困惑する表情を浮かべると、真っ直な視線を向けてきた。
「びっくりしないでね・・・・・?」
返事の代わりにコクリ、と頷いた。震える身体を押さえ込むように、両手をギュッと握りしめて、病室へと足を進める。