鬼の子
眠っている彼にキスを———。
次の瞬間、綱くんの乾き切った唇に落ちたのは、私の接吻ではなく・・・、
———1粒の涙だった。
1粒の涙が、彼の乾き切った唇にポツリと落ちた。
呪いのキスを落とすことは、出来なかった。
綱くんの命を救えるかもしれないけれど、反対に殺してしまうかもしれない。
殺めてしまう可能性があるのに、大好きな人に呪いの口付けをするなんて、私には出来ない。
1粒、1粒、私の涙が彼の眠っている顔に落ちていく。
———私は弱い。
なんて弱くて脆いのだろう。そんな自分が心底いやになる。強い子だったら出来たのかな?
・・・私には出来ないよ。1日でも長く生きていて欲しい。好きな人を殺すことになるかもしれないのに、接吻を落とせるはずがなかった。