鬼の子
その後のことは正直あまり覚えていない。
私の様子を心配する綱くんのお母さんに、軽く会釈をして病室を飛び出してきた。
外に飛び出すと、どんよりだった曇り空から、小雨が降り始めていた。
帰り道で人目を憚らずに泣いた。傘も刺さずに、泣きながら歩いた。道ゆく人々が私に怪訝そうに視線を送る。そんな視線を気にしてられないくらい、勝手に涙が溢れてくるのだ。
まるで私の心を表すように、しとしと、と雨が降り続く。身体は濡れて、服は色が変わっていた。
何が正解でどうすればいいのか。鬼の子の呪いは『人を殺すのか』『人の命を延ばすのか』
神様がいれば教えてください。こんなに神様の存在を願ったことはなかった。
なぜ彼が癌という悪魔に負けてしまうのか、どうせなら、町の人から嫌われ、迷惑がられている鬼の子が死んだ方が世の中の為になるのに。
もう何も望まないから、綱くん命を助けて欲しい。
泣きじゃくりながら、空を見上げて願った。