鬼の子
「昨日、見たんだろ?俺の姿」
「・・・うん」
「これから、あんなんばっかりだと思うわ。
もう、身体が自分の言うこと聞かねえんだ」
そう言って、点滴の針が刺さった、別人のように細くなった腕を高らかに天井に掲げた。
溢れてくる涙を抑える為に、唇をギッと噛み締めた。口の中に血の味が広がる。目に溜まる大粒の涙達は決壊寸前だ。
「茜、好きだよ」
とびきり優しい声で囁く彼の声に、驚いて目に溜まっていた涙が引いていく。普段の挨拶「おはよう」と同じような声のトーンで言われたので、これが告白だとは頭が認識しなかった。
返事はせずに、数秒の無言が続く。
「・・・えっ?スルー?」
「・・・今のって」
「俺は、茜が好きだっつってんの」
———今、好きって言った?
好きって・・・、鬼の子のこと?
まさか、そんなはずない。
だって、私は嫌われ者の鬼の子。
「こっち来るな」「消えろ」「迷惑だ」
今まで言われ続けた言葉が、頭の中でこだまする。
綱君の言い放った"好き"は私に向けられてるものなのだろうか、過去のトラウマから信じられない私は、綱くんへと視線を向ける。