鬼の子
19 呪いに
「うっ、ずるい、よ、そんな風に言われたら・・・・っ、断れないの分かってる・・っ、でしょ?」
溢れてくる涙でうまく喋れない。泣きじゃくりながらも、精一杯言葉を伝えようと唇をゆっくり動かした。
「もし、生きられたら・・・・・・ずっと一緒に生きていこう。死ぬことになっても、それは俺が望んだことだから・・・・・・気に病むことなく忘れてくれ、なっ?」
止まることのない涙が伝う頬を彼の細い指が撫でて拭う。指先でさえも愛おしくて、また視界が滲んでいく。
「・・・生きてっ、ほし、い。ずっと一緒にいたい」
「あぁ・・・・・・俺も同じ気持ちだ」
「・・・やっぱり、っだめだ。離れたくない。明日にしない?」
明日も一緒にいたい。離れたくなくて決心が鈍る。
・・・・・・もう一度抱きしめてほしい。
もう一度、もう一度、欲にはキリがない。
「明日は今日みたいに話せる状態かも分からない。・・・・・・正直、今日体が調子いいのは奇跡だと思ってる。ちゃんと意識があるうちにキスして欲しい」
その瞳はまっすぐで真剣なことが伝わってきた。
私は返事をすることが出来ない。
・・・・・・往生際が悪い。
「茜、・・・・・・愛してるよ」
私の耳に触れた手で、口元を覆っていたマスクを外す。
「マスクしてなくても、可愛い・・・・・・」
そんなはずない。涙と鼻水も混ざって、ぐちゃぐちゃになっている。明らかに不細工なはずだ。だけど、止まることを知らない涙は、ずっと溢れて止まらない。