鬼の子
近くで見ても毛穴ひとつない綺麗な肌をしていた。「近くで見ても綺麗な顔だな・・・・・」なんて考えていた。
ハッと我に返ると、ようやく見入ってしまったことに気づいた。
・・・ちっ、ちかい!
あまりの距離の近さに驚いて後退りをした。
その拍子にバランスを崩して、椅子から転げ落ちてしまった。
「そんな驚かなくても・・・・ わりぃ。大丈夫か?」
綱くんは転げ落ちて、床に尻餅をついている私に、大きくてゴツゴツとした手を差し伸べた。
え——・・・・?
光希や両親でさえも私の身体に触れてこようとはしない。呪いの詳細が不確定であるため、死を恐れて触れてくる者はいなかった。
なので、私はその手が何のために差し出されているのか理解が出来なかった。
今まで、一度も、手を差し出されたことなんてなかったから。