鬼の子





「渡辺くん!そいつ、鬼の子だから触らない方がいいって!!」


クラスの男子が勢いよく言い放った。
思いのほか声が大きくクラス中に響き渡り、みんなが注目した。注目されて居心地が悪くなったのか、そう言った張本人はバツが悪そうな顔をしている。


そんな気まずそうな顔しなくても、今更気にもしないのに。




「鬼の子・・・・・?」




(つな)くんは怪訝そうな顔で首を傾げていた。



ああ、彼もか。
心の中のどこかでガッカリしている自分がいた。
鬼の子だと知らなかったから、私に話しかけてきただけなのに、何を期待していたんだろう・・・。

鬼の子だと分かったら、私を避けるのは当然だ。この転校生も私に近づくことは、もうないだろう。



考えてみたら学校で光希(こうき)以外の人に、目を合わせて話しかけられたのなんて、初めてだった。


———今日が最初で最後だったのかも知れない。


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