鬼の子
「鬼歯って言うんだけど・・・・・」
「それ、八重歯だろ!」
そう言いながら、くくくっと肩を揺らして笑っていた。
綱くんって、こんな顔で笑うんだ。
ずっと不機嫌そうな表情で、笑顔を見ていなかったので、目元がくしゃっとなる笑い方が意外だった。
「俺にも八重歯あるけどな」
そう言うと、ニーッと笑って歯を見せた。
確かに、私と似た鬼歯っぽいのが見える。
「・・・・・それ、八重歯って言うの?
私、昔から笑うとこの鬼歯が見えるから、笑うなって言われてて・・・・・・」
「鬼歯も八重歯も同じじゃね?
俺は自分のチャームポイントだと思ってる。
女の八重歯も可愛いけどな」
か、かわいい??
かわいいという言葉に、まったく免疫がない私の頬は勢いよく赤く染まった。
かわいいなんて、生まれて初めて言われた。
両親にだって、言われたことないのに。