鬼の子




古い時代の鬼王(きおう)の名を持つ者は、他民に恐れられ権力を持ち、地位と名誉を認められ、だいぶ幅を利かせてたらしい。

それも昔の話で、令和の現在は鬼王だからといって昔みたく権力がある訳ではないし、地位も名誉もなにもなかった。


鬼王の名を持つ私の父は、この町で1番大きいお寺の住職をして生計を立てている。

1番大きいお寺といっても、お金に裕福なわけではない。母は飲食店にパートで働きに出ているし、なんら普通の家庭と変わらない。
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