鬼の子

それ故に、お父さんとお母さんでさえ、幼い頃から私の手を握ったことはなかった・・・・・。


子供だったら当たり前に親と手を繋ぐ。その日常を経験したことがなかった。———誰かと手を繋いだことなど、人生で一度もなかったのだ。


それなのに、こんなに簡単に・・・。
普通の人の手を握るように、意図も簡単に鬼の子の手を握るなんて。



気付くと私の目からは大粒の涙が溢れ出ていた。
目の前の景色が涙で滲んでいく。自分でも感情のコントロールが出来ない。決壊したダムが溢れ出るように涙が止まることはなかった。

涙で滲んだ景色に映る綱くんの顔は、怖いくらいに綺麗だった。
< 50 / 246 >

この作品をシェア

pagetop