鬼の子
「ちょっと!あんたたち。こんなところで、何してるの?」
怒っているけど、心配してるような優しさの感じるこの声は、何度も聞いたことのある声だった。
「お母さん!?」
蔵入り口には扉を開けて、驚きながらも怪訝そうな顔をして少し怒っているように見える母の姿があった。
「ちょっと!茜も光希もこの蔵にどうやって入ったの?あら?見たことない顔も・・・・・」
そう言ってお母さんは視線を向けた。視線を向けられた綱君は、ペコリと浅めのお辞儀をした。
「彼は同じクラスの・・・・・」
「とりあえず、お父さんにバレたら大変だから、家に帰るよ?」
綱くんのことを紹介する前に、言葉を被せられて遮られた。
「悪いけど、家族で話すから今日は帰ってもらえる?」
お母さんは綱くんに視線を向けて言葉を続けた。その表情は険しくて、有無を言わせない感じだ。
そんな空気を読んだのか、綱くんは軽くお辞儀をすると、私に向けて大きく頷き、一足早く蔵を後にした。