鬼の子




「・・・・・これ」


必死に止めようとする私に、声を掛けてきたのは、クラスメイトの女子だった。艶がある黒髪でボブカット顔は見覚えがあるけど、話したことはない。名前も・・・・・分からない程度の認識だった。

ぶっきらぼうに言いながら、渡してきたのは雑巾だった。渡された雑巾を手に持ちながら放心状態が続く。


・・・・話しかけられた?
いや、鬼の子の私なんかに、話しかけてくる訳ないし、何かの間違い??



「・・・それで、机拭いたら?」

しばらく私の様子を伺っていた彼女は、私が固まっているのを見て、言葉を発した。


その言葉を聞いて、ようやく机の汚れを取るために渡してくれた雑巾だと頭が理解出来た。


「あ、あり・・・・・ありがっ、とう」


慌てていたので、盛大に噛みながらお礼を伝えた。私に視線を合わせて、うん、と頷いてくれたので伝わったようだ。





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