鬼の子


「つ、綱くん・・・ハンカチ、ごめんね」

胸の高鳴りを悟られないように、早口で言葉を発した。


「ほら、また謝ってんじゃん」


「あ、でも・・・・・これは・・・・・」


「俺が勝手にやったんだから、お前が謝る必要性なんてないだろ」

そういうと、私が手に持っていた雑巾をひょいっと奪って、ゴシゴシと机の落書きをこすり落としている。


「・・・・・・なんだよ、これ。茜はなにも悪くない。悪くないんだから、気にすんなよ」

「・・・う、うん」


綱くんの「茜はなにも悪くない」その言葉が心の奥深くまで浸透する。

「鬼の子が悪い」
「鬼の子が生きてるのが悪い」

散々言われてきて頭の中を埋め尽くしていた、私が悪いと言う罪悪感を溶かしてくれるようだった。
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