鬼の子
「・・・・よいしょっと」
綱くんは机と椅子を運び終えると、自分の席に座った。何事もなかったかのように、机の上に肩肘をついて窓の外に視線を向けている。
私も自分の席に座り、久しぶりに暴言中傷が落書きされていない綺麗な机を手のひらでなぞった。
そして、外へ視線を向けてみる。窓から見える空は雲ひとつない青空が澄んでいた。
今までと同じ時間、同じ場所から見る景色のはずなのに、全く違う景色のように輝いて見えた。
クラスメイトに注目されているような気がして気が引けしまい、綱くんにお礼を言いそびれてしまった。
なんとか「ありがとう」を伝えたいと思い考えていると、目の前にある大きな背中が目についた。