桜のお姫様
いつの間にか、屋上に来ていた。

なんで、屋上なんか来ちゃったんだろう?

ここに来ても、良いことないのに。

あの時のことを、思い出しちゃうだけなのに。

みんなは、今のみんなは、昔みたいに、私のことは見てくれない、私の声は聞いてくれないというのに。

私だけ過去にすがったりなんかして、笑えるね、惨めだよね。

あの時に戻れるわけないのに。

ほんとうに、ばか...

ただ、声を押し殺して泣いた。

透華のみんなには、弱いところを見られたくなくて押し殺していた涙が、後から後から流れ落ちる。



「っ!」




もうみんなは、あの頃の、私の大好きだったみんなじゃない。

姫喜のことで周りが、なにも見えなくなってしまった“やつら”だ。
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