おもかげ
ヘッドライトに照らし出される此の道の先には、いったいどんな未来が待っているのだろうか、
曲がりくねった山道の傍には、
生い茂る木々の枝が幾重にも重なり合い、
遠く先を望む事ができない。
灯り一つない峠道を越えると、
やがて景色が開けて湖の畔に辿り着いた。
十三夜の淡い月灯りが湖面に映えて、辺りは静かな夜の帳に包まれている。
エンジンをかけたままエアコンの温度を緩めて、
サイドシートで眠る彼女の横顔に、
そっと口づけをした。
「着いたよ」
『、、えっ、何処に?』
夢うつつな眼差しで僕を見上げた愛しい面影
「花火を観に来たよね」
"あーぁそうだったね" とハニカム彼女は、
カーラジオから流れる80年代のバラードに心を奪われた。
『懐かしい、ボリュームを上げてよ』
< 1 / 4 >