おもかげ
望むがままにラジオのボリュームを上げると、
彼女は助手席のドアを開けて外に飛び出した、
リズムに合わせて、しなやかに身体を動かす。
『出会った頃に、一緒に踊ったよね、、』
月明かりに照らし出された彼女のシルエットが、
艶やかに浮かび上がった。
『ねぇ、一緒に踊ろうよ、、』
「あぁ、いいよ」
二人は身体を重ねながら動きを合わせ、
時折り、悪戯にキスを交わした。
初夏の夜風は湖面を渡り、
二人の熱すぎる情熱を冷ましてくれる。
踊り疲れて、車のシートに戻ると、
汗ばんだ肩を抱き寄せて更に唇を重ねた、
甘く、やがて激しく、、
此処には、二人を邪魔するものは何もない、
人も、
灯りも、、
時間さえ止まっているかのように静寂が纏う。
ただ二人の荒い息づかいだけが乱れていた。
『私を離さないでね』
「いつまでも一緒さ」
言葉の契りほど無意味な物はない、
だからこそ、男と女は身体を求め合う。