カクテル
「麻理さん、カクテル言葉ってなんですか?」
「花言葉みたいに、カクテルにもそれに合った言葉が付けらているの、
例えば、ジンライムは"色褪せぬ恋"、
XYZは"永遠にあなたのもの"といったようにね。」
「へぇ、初めて聞きました、
麻理さんのカクテルは?」
「私のはブランデークラスタ、"時間よ止まれ"って言葉がついてる、
カクテルは男女が恋愛のシーンで飲む事が多いから、恋や愛に関する言葉がほとんどだね」
麻理さんは何でも知っている、
知識の深さも彼女の魅力の一つだった。
僕は、そんな会話を交わしながらグラスを傾ける大人の世界に少し興味を覚えた。
「君嶋くんも、彼女を口説く時のために覚えておいた方がいいよ」
それはいいかも、でも、、
今の僕にはそんな大人のセリフは似合わないかな
「君嶋くん、乾杯しよ、こういう店では、グラスを鳴らしての乾杯はダメだからね」
「は、はい」
場の雰囲気を損なわぬよう、グラスを持ち上げて乾杯した。
「う〜ん、やっぱり美味しい、、
私ね、これが飲みたくなると、この店に来てマスターとお喋りするの」
「僕のカクテルもマスカットの味がして美味しいですよ」
マスターは満足げに微笑んでいる。
入社当初、同期の仲間達と毎週のように、週末は飲みに繰り出したけれど、
安さ重視の大衆居酒屋ばかりで、こんな落ち着いた雰囲気のお店は初めてだった。
まさしく女性を口説くにはもってこいの場所だと思う。