カクテル
後味の悪さが喉に引っかかって飲み込めないでいた。
あんなチャンスは二度と無いかもしれない。
据え膳の麻理さんを抱けないなんて、彼女が怒るのも無理はない。
でもやっぱり、身体だけの交わりなんて悲しい、
そこに愛があれば、何倍も喜びを感じるはずなのに。
麻理さんは僕の憧れだから、
あんな弱さは見たくなかった。
月曜日の朝、定時に出社すると麻理さんの姿はまだ無かった。
あの後何かあったか?
僕の言い方が悪かったか?
考え出すと、ついつい悪い方向に向かうものだ。
「君嶋くん、おはよ」
不意に横から声がして、麻理さんが椅子に座った。
彼女の顔を見て、ほっと胸を撫で下ろした。
「もう大丈夫なんですか?」
「お酒? 全然、昨日は二日酔いだったけどね、
でも、今日は私機嫌悪いから話しかけない方がいいよ」
「済みません、僕のせいで」
「君嶋くんは関係ないよ、今日は私、
女の子の日だから」
「えっ、麻理さんそんな事普通男の人に言わないでしょ」
「だって、"機嫌悪いからあの日かな"とか勘繰られるの嫌じゃない。最初に言っておけば、気を遣ってもらえるからそんな心配ないでしょ」
やっぱり麻理さんはこうでなくちゃ
「はい、さすが麻理さん、実に効率的ですね」
とりあえず週末の出来事は不問らしい。