カクテル
でも、、
「マスター、僕も麻理さんに好意を持っているのは事実です。僕が自由の身だったら、今すぐにでも麻理さんの所に飛んで行きたい。
でも、今の僕にはそれができません」
「君嶋さんには、誰か恋しい人がいるんですか?」
「はい、二つ年下の彼女が、彼女には僕が必要なんです。彼女を捨てて麻理さんを取る事はできません」
「そうですか、、それは残念ですね、、」
マスターは、視線をおとして本当に残念そうにつぶいた。
その時、入り口の呼び鈴が来客を告げた。
マスターは客の姿を見て驚いた顔をして固まってしまった。
唯ならぬ雰囲気に気になって振り返ると、店の入り口には信じられない男女が立っていた、
「ま、麻理さん、、それに田中主任、、」
「なんだ君嶋くんじゃないか、良くこんな店を知ってたな」
さすがに麻理さんに教えてもらったとは言えない、
田中主任の後ろで、気まずい顔した麻理さんが掌を合わせて訴えている。
「は、はい同期の子に教えてもらったんです、さっきまで一緒に飲んでいたんですけど、先に帰ってしまって。僕もそろそろ帰ろかなって思ってたところです」
咄嗟に嘘をついた。
「そう、まぁいいけど。僕らこう言う関係だから、麻理の事は誰にも言わないようにね」
「は、はい、わかってます」
なるべく麻理さんを見ないようにして、マスターに精算をお願いした。
「主任、芳崎さん、お先に失礼します」
「あぁ、遊んでばかりいないで仕事も頑張れよ」
もう一度お辞儀をして、その場を後にした。