カクテル
店を出ると弱い雨が降っていた、
持ち合わせの傘もなく濡れながら駅まで歩くしかなかった、
その足取りが重たく感じていた。
ひどいよ、麻理さん、、
麻理さんの彼氏が田中主任だった事もショックだけど、それより僕との約束をキャンセルして、主任と会ってたなんて、、
「君嶋くん!」
聞き覚えのある声に振り返ると、麻理さんが追いかけてきた。その後ろから田中主任の姿も見えた。
「麻理! 待って、」
田中主任は麻理さんに追いつくと、肩を掴んで強引に振り向かせた。
「離して、もうあなたとは別れるわ」
麻理さんは主任の手を振り解くと、僕の腕に掴まって歩き出した。
「君嶋くん、行こ!」
「なんだ、お前達はそういう関係だったのか?
俺の女遊びばかり責めやがって、お前も同じだろ!」
「君嶋くんと私はそんな関係じゃないから!」
「男なんて皆んな一緒さ、女を抱きたいだけだ」
「君嶋くんをあなたなんかと一緒にしないで」
「なんだ、まだ抱いてもらってないのか?
君嶋くん、ベッドの上の麻理は最高だぞ」
その言葉に怒った麻理さんは、田中主任の頬を平手打ちにした。
「あなた、ほんとに最低ね」
そう言い残して、
麻理さんは、僕の手を再び取って走り出した。
ま、待って麻理さん、、泣いてる?
大通りまで出ると、通りすがりのタクシーを拾って麻理さんのマンションに向かった。
麻理さんは僕の胸の中でずっと泣いていた。
「・・ごめんね君嶋くん、私すごい酷い事したね、、」
「大丈夫ですよ、そんなに怒ってないから、少し悲しかっただけです」
確かに、僕に嘘をついて主任と会っていた彼女も悪い、まあ正直に話してくれていても良い気はしなかっただろうけど、
でも、そんな彼女の気持ちを知ってて弄ぶ田中主任はもっと許せない。