カクテル

店を出ると弱い雨が降っていた、
持ち合わせの傘もなく濡れながら駅まで歩くしかなかった、
その足取りが重たく感じていた。


ひどいよ、麻理さん、、
麻理さんの彼氏が田中主任だった事もショックだけど、それより僕との約束をキャンセルして、主任と会ってたなんて、、


「君嶋くん!」
聞き覚えのある声に振り返ると、麻理さんが追いかけてきた。その後ろから田中主任の姿も見えた。

「麻理! 待って、」

田中主任は麻理さんに追いつくと、肩を掴んで強引に振り向かせた。

「離して、もうあなたとは別れるわ」

麻理さんは主任の手を振り解くと、僕の腕に掴まって歩き出した。
「君嶋くん、行こ!」

「なんだ、お前達はそういう関係だったのか?
 俺の女遊びばかり責めやがって、お前も同じだろ!」

「君嶋くんと私はそんな関係じゃないから!」

「男なんて皆んな一緒さ、女を抱きたいだけだ」

「君嶋くんをあなたなんかと一緒にしないで」

「なんだ、まだ抱いてもらってないのか?
 君嶋くん、ベッドの上の麻理は最高だぞ」

その言葉に怒った麻理さんは、田中主任の頬を平手打ちにした。
「あなた、ほんとに最低ね」

そう言い残して、

麻理さんは、僕の手を再び取って走り出した。


ま、待って麻理さん、、泣いてる?

大通りまで出ると、通りすがりのタクシーを拾って麻理さんのマンションに向かった。


麻理さんは僕の胸の中でずっと泣いていた。

「・・ごめんね君嶋くん、私すごい酷い事したね、、」

「大丈夫ですよ、そんなに怒ってないから、少し悲しかっただけです」

確かに、僕に嘘をついて主任と会っていた彼女も悪い、まあ正直に話してくれていても良い気はしなかっただろうけど、
でも、そんな彼女の気持ちを知ってて弄ぶ田中主任はもっと許せない。
< 26 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop