カクテル

彼女のマンションに着くと、雨に濡れたからシャワーを浴びたいと言う。

遠くに聞こえるシャワーの音が僕の抑えきれない欲情を掻き立てていた、



「君嶋くんも浴びたら、私のTシャツとスエットを出しておくから着替えて」

「本当に風邪を引きそうだから、甘えます」

「うん、私はコンビニに行ってお酒とおつまみを買ってくるからね、ごゆっくりどうぞ」

シャワーを浴びながら考えを巡らせた、
僕はどうすればいいのだろう、
これ以上麻理さんに思いを寄せると戻れなくなる気がする。

大切な彼女を捨てるわけにいかない、でも麻理さんも悲しませたくない。
どちらも選べなくなってしまうのではないか、


「ただいま〜、君嶋くんまだシャワー浴びてるの?」

「もう出ます、済みません」

彼女が用意してくれたスエットを着て出ると、
そこには、さっきまでの事が嘘みたいに明るい麻理さんがいた。

「長かったねー、念入りに洗ってた?」

「麻理さん、そういう事じゃないですから!」

「そんなにムキにならないの。まぁいっか、楽しみは後に取っといて飲もう!」

「かんぱ〜い」

「麻理さん、なんで僕を追いかけて来たんですか?
 せっかく誤魔化してあげたのに」

「カウンター席に着くなりマスターがね、
『麻理さん、君嶋さんと約束してたんじゃないんですか、どうして彼氏と一緒なんですか?』って暴露しちゃったの、
私は、呆気に取られて何も言えなかった。

そしたら田中さんが『麻理、どういう事だ』って怒り出すから、もうどうでも良くなって席を立とうとすると、彼が私の腕を掴んだの、

終いにはマスターが彼の腕を抑えて『麻理さんと別れてあげて下さい』ってキッパリ言って、ジ・エンドね」


修羅場が目に見えるようだ、

「普通、お客さんの話には一切立ち入らないマスターが、なんであんな事を言ったんだろう?」

< 27 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop