カクテル
彼女のマンションに着くと、雨に濡れたからシャワーを浴びたいと言う。
遠くに聞こえるシャワーの音が僕の抑えきれない欲情を掻き立てていた、
「君嶋くんも浴びたら、私のTシャツとスエットを出しておくから着替えて」
「本当に風邪を引きそうだから、甘えます」
「うん、私はコンビニに行ってお酒とおつまみを買ってくるからね、ごゆっくりどうぞ」
シャワーを浴びながら考えを巡らせた、
僕はどうすればいいのだろう、
これ以上麻理さんに思いを寄せると戻れなくなる気がする。
大切な彼女を捨てるわけにいかない、でも麻理さんも悲しませたくない。
どちらも選べなくなってしまうのではないか、
「ただいま〜、君嶋くんまだシャワー浴びてるの?」
「もう出ます、済みません」
彼女が用意してくれたスエットを着て出ると、
そこには、さっきまでの事が嘘みたいに明るい麻理さんがいた。
「長かったねー、念入りに洗ってた?」
「麻理さん、そういう事じゃないですから!」
「そんなにムキにならないの。まぁいっか、楽しみは後に取っといて飲もう!」
「かんぱ〜い」
「麻理さん、なんで僕を追いかけて来たんですか?
せっかく誤魔化してあげたのに」
「カウンター席に着くなりマスターがね、
『麻理さん、君嶋さんと約束してたんじゃないんですか、どうして彼氏と一緒なんですか?』って暴露しちゃったの、
私は、呆気に取られて何も言えなかった。
そしたら田中さんが『麻理、どういう事だ』って怒り出すから、もうどうでも良くなって席を立とうとすると、彼が私の腕を掴んだの、
終いにはマスターが彼の腕を抑えて『麻理さんと別れてあげて下さい』ってキッパリ言って、ジ・エンドね」
修羅場が目に見えるようだ、
「普通、お客さんの話には一切立ち入らないマスターが、なんであんな事を言ったんだろう?」