カクテル

「麻理さんはマスターがどんな人か知らないんですか?」

「死んじゃったお母さんの同級生としか聞いてないよ」

「マスターと麻理さんのお母さんは、昔恋人同士だったみたいですよ」

「えっ、そうなの?」

「だから、マスターは麻理さんが娘の様に可愛いし、幸せになって欲しいって言ってました」

「そうか、だからマスターは単なるお客さん以上に
私の事をいつも気にかけてくれてたんだ。

今まで、ずっと私に気があるのかなって思ってた」


麻理さん、それは言い過ぎです。


マスターは、そうなる事を承知でわざと言ったわけだ。ちょっと荒療法だったけど、マスターの願いは叶ったんじゃないか。


「麻理さん、これからどうするんですか?」

「主任のこと?もう戻せないし、戻る気もないから。
本当はね、彼の女好きは付き合い出した時にわかってたんだ、、あそこまで酷いとは思っていなかったけど、でもね、いつかは私だけを見てくれると信じていたの、諦めきれなかった」

「でも、主任はこのまま引き下がらないと思うけど」

「その時はその時、私に何かしたらセクハラで訴えてやるから」

やっぱり麻理さんは強い。

「君嶋くん、もうそんな話しはやめて楽しく飲もうよ、おかわりは?」

「はい、いただきます」

「向かい合って飲むのも雰囲気無いなぁ」

麻理さんはそういうと、僕の隣にちょこんと座り直して腕に掴まった。
「これがいいかな」

いいかなじゃなくて、、
石鹸の良い香りが僕の理性を崩しにかかっていた。

「麻理さん、言っておきますけど、僕には彼女がいますから」

「知ってるよ、可愛くてしょうがない彼女でしょ」

「はい、だから誘惑しないで下さい」

「少しぐらい良いじゃない、彼女見てないんだし」

「そういう問題じゃなくて、これ以上麻理さんに傾倒すると、僕自身が戻れなくなるから」

「あらー、もうちょっと頑張れば、君嶋くんは私のものになるのね、、」


「麻理さん、、」
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