カクテル
6.デニッシュメアリー(貴女の心が見えない)
「麻理さん、ソフトウェアの時限爆弾って何ですか」
「おぉ君嶋くんも、一丁前にプログラマらしい事を聞くようになったねー、
つまりね、今は家電にしても車にしても何でもコンピュータが入ってるじゃない。家電なんかは10年が寿命って言われてるけど、故障もソフトウェアが制御してたらどうする?」
「えー、わざと故障させてるって事ですか?」
「噂だけどね、でもプログラムで簡単に出来るでしょ、何年経ったらとか、何回使ったらとか、エラー表示するだけだからさ。壊れてなくてもね、
つまり、昔は故障したら修理してまた使ってたけど、今は余程買ったばかりじゃない限り買い替えるよね。
そのエラーを表示するタイミングを、買い替え時期を見計らってプログラムで制御してるんじゃないかって事だよ」
「本当なんですか、消費者は騙されてるのかなぁ」
「都市伝説みたいなものだから、家電のマイコンなんてブラックボックスになっていて、メーカー以外には調べようがないからね」
それが本当なら、何も信じられなくなりそうだ。
「芳崎さん、君嶋くん、ちょっといいかな。
会議室に来てもらえる」
課長に声をかけられた。
「麻理さん、何でしょうか?」
麻理さんは、お茶目に両手を肩の高さに上げて"分からない"のポーズを取った。
会議室の席に着くなり、
「田中主任の後任なんだけど、男女共同参画の話もあって、寺澤部長が芳崎さんを人事に推薦したいと言うんだけど、どうかな?」
えっ、麻理さん凄いじゃないですか、女性の主任なんてこの部署にはいないし、しかも入社5年目でなんて大抜擢ですよ
「私には、自信がありません。メンバーは先輩ばかりだし、それに君嶋くんの教育係がまだ半年残ってますから」
麻理さん、こんなチャンス二度とないです、いつもの強気な麻理さんでいって下さい
「そうか、まぁ一度部長と相談してみるか、、
それと、話は変わるんだが二人に出張を頼みたいんだけどいいかな」