カクテル
麻理さんと二人で出張?
「仕事ですから、行けと言われれば何処へでも行きますが、、」
「本当は田中主任が行くはずだったんだけど、和歌山の田辺電産という会社でシステムの入れ替えがあるんだ。
その立ち会いをして欲しい。
和歌山支店のSEが現地にいるから対応は任せればいいよ、問題がなければ旅行気分だから気が楽だろう」
「分かりました。いつですか?」
「来週後半だったと思うけど、後で資料を渡すから宜しく頼む」
課長はそれだけ言うと席を後にした。
「麻理さん、主任ですよ。迷う事ないじゃないですか」
「私は他人の上に立つような人間じゃないわ、
自分で頑張って仕事をするのと、他人に押し付けるのとでは、雲泥の差があるから。
他人に無理を頼むぐらいなら自分でやった方がいいよ」
麻理さんらしい、、
でも、折角のチャンスなのに勿体ない気がする。
「それより君嶋くんは初めての出張だよね、楽しみだね、 むふ」
麻理さん、"むふ"って何ですか?
翌週木曜日、麻理さんと名古屋駅の西口にある壁画前で待ち合わせた。
ビジネススーツ姿の麻理さんは、イメージ通り格好いい。
名古屋から新幹線で新大阪まで出て、そこから特急くろしおに乗って田辺市まで4時間弱で着いた。
「圭悟、なんか街の雰囲気が違うね」
「まあ、名古屋は一応都会ですから、ごちゃごちゃしたイメージが有りますよね」
「待ち合わせの時間まで余裕があるから、先にホテルにチェックインしよっか」
ビジネスホテルのフロントでチェックインを済ませて部屋のキーを受け取る。
「なんだ、ツインじゃないんだ、、」
「当たり前じゃないですか、事務員さんが予約してくれたんだから、男女でツインはあり得ません」
「事務の沙和ちゃんにランチ奢っとけばよかったなぁ」
この人はどこまでが本気で、どこからが冗談なのか分からない。
「まぁいっか、狭いけど抱き合って寝れば大丈夫だね」
「何の話ですか!」