カクテル
夕方5時、和歌山支店の担当SEと打ち合わせを兼ねて食事をすることになっていた。
「初めまして、和歌山支店の都築です」
麻理さんは渡された名刺を見るより先に、彼の声に反応していた。
「都築さん?あーー」
「芳崎さんじゃないですか、久しぶりです」
どうも二人は知り合いみたいだ。
「そっか和歌山支店だったね、もう何年?」
「2年半ぐらいになります、名古屋の皆んなは元気ですか?」
「うん皆んな元気でやってるよ、あっと彼を紹介しとくね、私の後輩で入社2年目の君嶋くん」
「君嶋です、宜しくお願いします」
都築さんの顔を見ながら挨拶した時、彼の視線に違和感を覚えた、舐め回すように僕を観察している。
好きな女性が連れている男を、品定めしているかのようだった。
「えっと彼は、都築 慎一さん、もともと名古屋で同じグループにいたんだけど、和歌山支店に転勤になったの」
へぇー同じ名古屋での異動はあっても、地方へ転勤の話は聞かないけどなぁ、
都築さんの表情を窺うと余り触れられたくない話題みたいな気がする。
「田中主任が来られると聞いてたんですが」
「彼は会社を辞めたわ」
「辞められた? そうですか、あんな仕事ができた人がまた、どうして?」
「女癖が悪かったでしょ」
「あぁ、そっちですか。勿体ないですね、
そういえば、田中主任は芳崎さんの教育担当でしたよね? すごい仲が良さそうに見えましたが」
「そうだよ、あの当時の彼は優しくて尊敬できたけどね」
初耳だった、田中主任が麻理さんの教育担当だったなんて、
それで、親密な仲になったのかなぁ
今の僕と麻理さんみたいに、、
その後、30分程明日の打ち合わせをして雑談となった。