カクテル
「芳崎さん、久しぶりに一杯どうですか?
積もる話もありますし」
「いいわよ、君嶋くんも行く?」
「久しぶりの再会ならお二人でどうぞ、邪魔しちゃ悪いから僕は先にホテルに帰ります」
「わかったわ、ありがとう。じゃあ明日は朝8時にロビーで待ち合わせしよっか」
「了解です、麻理先輩飲み過ぎないようにお願いします」
麻理さんは声には出さず、満面の笑みを僕に返した。
ん、あやしい、、
「冗談抜きで、飲みすぎないようにお願いします」
自分から言い出した事とはいえ、無理にでも誘って欲しかった、しょうがなくコンビニで酒とツマミを買って、一人寂しくホテルに戻った。
麻理さんを彼に取られた気がしていた。
一人で飲む酒が美味しい筈がなかった、煽る様に飲んで早めに寝ることにした。
翌朝、準備をしてロビーに降りると、麻理さんの姿はまだ無かった。
フロントでチェックアウトを済ませて聞いてみると、昨日は帰ってないと言う。
耳を疑った、、朝帰り?
麻理さん、あの男と一晩一緒だったってこと?
昨日の事が思い出される、やけに親しそうだった、
単なる同僚以上の関係だったのかもしれない、
元カレか?
麻理さんは待ち合わせ時間の10分前になって、ようやくホテルの入り口に姿を現した。
「君嶋くん、ごめん、
荷物取ってくるから少し待ってて」
2人で何時まで飲んでいて、それから何処へ行ったんだろう。
麻理さんに直接聞くに聞けず、悶々とした気持ちのまま、今日の仕事場である田辺電産のシステムセンターに向かった。
従業員30人程の小規模な会社で、当社の担当SEも都築さん1人だった。
「ついさっきまで一緒でしたけど、改めておはよう御座います。芳崎さん二日酔いじゃないですか?」
「これぐらいは全然大丈夫だよ、都築さんは?」
都築さんは、麻理さんの耳元で小声で囁く、
「ちょっとお酒が残ってます」
それが僕には、2人がイチャイチャしている様に見えた。