カクテル

10.ブランデー・クラスタ(時間よ止まれ)


「君嶋くん、外線2番に電話だよ、
 彼女から」

麻理さんの声のトーンが低い、、

「はい、すみません」


「もしもし麻由ちゃん、仕事中は駄目だって、、
 うん、大丈夫だから僕がついてるから心配しないで、また後で電話するから、切るね」

それを盗み聞きしていた麻理さんに冷やかされた、

「大丈夫だから、僕がついてるからだって、、
 あー、いいなぁ、私も誰かに甘えたいなぁ、
 君嶋くん、今日の帰りどうかな?」

「今の話を聞いてなかったんですか?今日は彼女が心配だから、付き合えません」

「あっそう、何で私が好きになる人は、他に女がいるんだろう、、」

麻理さん、、


毎週水曜日の午後1時からはグループの定例会議で、各々の仕事の進捗状況やトラブルの対処報告など、メンバーの情報の共有を図っていた。


会議の終わりに、いつもは顔を出さない課長が突然入ってきて話をしはじめた。


「少し、時間をもらえますか、
先日、東京の本社の方から依頼があって、今アメリカで急成長しているインターネットについて、当社としても今後の方針を決めるために、まず現状を把握したいと。
その視察、研修を兼ねて数名を派遣したい旨の通達がありました。
うちの課からも一人有能な人材を出して欲しいとの事で、芳崎さんに行ってもらう事にしたので皆さんに報告して置きます、芳崎さん一言お願いします」

えっ、麻理さん?

「突然の事で驚かせてしまってすみません。
 2週間ほど前に課長の方からこの話を頂いた時、正直なところ悩みましたが、君嶋くんの教育担当も終わるし、
私には後ろ髪引かれるような家族も居ませんので、他の人が無理して行くぐらいなら私がと思い決めました。期間は2年ですけど必ず戻って来ますので、留守の間宜しくお願いします。」


どうして、、僕は何も聞いてない、

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