カクテル
向かい合って、優しい口づけを交わすと、
麻理さんは上目遣いに僕の瞳を真っ直ぐに見た、
「圭悟、エッチしよ」
「はい、お願いします」
その夜、僕らは一生忘れられない一夜を共にした。
決して身体だけの交わりじゃない、
お互いが、かけがえの無い存在である事を、
触れ合う肌の感触から確かめ合った。
二人に、
幸せな未来は訪れないと知っているはずなのに、
彼女を求めて止まない。
「圭悟、もう泣かないで、、」
「僕は馬鹿だ、こんなに大切な物が近くに有ったのに、、それに気づいていたはずなのに、気づかないフリをしていた」
麻理さんは僕を胸に抱いて、優しく頭を撫でる。
汗ばんだ肌に身体を預けると、
高ぶった感情が少しずつ鎮まっていく、、
「私は始めから分かっていたから、圭悟は彼女を捨てないって。たった一人の女性を自分の全てを懸けて幸せにしたい。あなたは、そういう人だよ。
だからこそ私はあなたを好きになったんだ、報われない恋だと分かってても好きになる気持ちは止められない。だから後悔はしてないよ。」
「麻理さん、、ごめんなさい、、」
互いの肌の感触を、温もりをいつまでも忘れないように記憶に深く刻みつける。
夜が明けるまで僕らは愛し合った。
彼女の美しいシルエットライン、滑らかな肌、甘い吐息が余韻を残して頭から離れない。
たった一夜の契りが、
二人の中では永遠のものになった。
帰りの車の中で、
流れる景色を見ながら麻理さんが呟いた。
「圭悟、ありがとう。
私の叶わぬ恋を成就させてくれたね、あなたに抱かれなかったら忘れる事ができなくなってた」
僕は、今朝の人生最高の幸福感から、彼女を失う絶望感にうちひしがれていた。
「麻理さん、すみません、、許して下さい」