カクテル
11.ブラッドハウンド(本当は見つけて欲しい)
次の週、麻理さんは仕事の引き継ぎと世話になった人への挨拶や身の回りの片付けに追われていた。
僕は片付けを手伝いながら、残り少ない時間を一緒に過ごしていた。
「やっぱり淋しいなぁ」
「麻理さん、、2年すれば戻れますから」
「そうだけど、、
君嶋くん、彼女を幸せにしてあげてね、
2年後、まだ結婚してなかったら、
私が奪っちゃうからね」
「はい、その時は遠慮なく奪って下さい」
麻理さんは、もの悲しい表情はしていても何か吹っ切れた感じがしていた。
僕はと言えば、反対に艶めかしい麻理さんの姿が瞼に焼き付いて離れない。
細い指先、しっとりとした唇、
滑らかで弾力のある肌、、
あの一夜だけは、全て僕のものだった。
金曜日の朝、僕が出社すると麻理さんままだ来ていなかった。
最終日なのに、遅いなぁ、
気になって向かいの席の角さんに聞いてみた。
「あれ、君嶋くん聞いてなかった? 麻理さんは昨日までだよ。昨日の帰り際にお世話になりました、行ってきますって挨拶してたから」
「えっ 本当ですか。僕には何も、、」
麻理さん、どうして黙って、
さよならぐらい言わせて下さいよ。
それを聞いてた横谷さんが、
「君嶋くん、これ麻理さんがあなたにって、顔を見て別れると涙が止まらなくなるからって言ってたよ」
そんなぁ、麻理さん手紙でさよならですか、、
「横谷さん何時の新幹線か聞いてないですか?」
「そう言うと思って聞いといてあげたよ、10時43分発ののぞみだって、君嶋くん麻理さん淋しいだろうから行ってあげて」
時計を見ると、あと40分しかない。
「課長、すみません早退します。」