カクテル

呆気にとられる皆を尻目に、慌てて会社を飛び出してタクシーを拾った。

「運転手さん、名古屋駅まで何分ですか?」

「どうだろう混んでるからねー、30分ぐらいかなぁ」

「なるべく急いでお願いします」

「はいよ」


麻理さん、絶対間に合うから待ってて、



名古屋駅西口にタクシーを着けて、"お釣りはいらないです"と言って飛び降りる様に降りた。

急いで入場券を購入して改札を抜けると、新幹線ホームへ繋がる階段を駆け上がってホームへ出た。

まだ麻理さんが乗るのぞみは来ていないみたいだ。

周りを見渡して、線路を挟んだ反対側に居る麻理さんを見つけた、そこで初めて自分の大失敗に気づいた。

自分が居るホームは大阪方面行きだ、、

一旦階段を降りて回らなければ東京方面の乗り場には行けない。


僕は、人目も憚らず彼女の名前を叫んだ。

「麻理さんー!」

麻理さんは僕の声に気づいて顔をあげた。

「、、圭悟」

「今そっちに行きますから、待ってて下さい!」

慌てて戻ろうとした時、新幹線がホームに滑り込んできて、麻理さんの姿が隠れて見えなくなった。


嘘だー、

間に合わなかった、

さよならも言えなかった、、



乗客の乗り降りが終わって、ゆっくりと新幹線が動き出す。

窓から見える乗客の顔を1人ずつ確認する。

何処にもいない、、麻理さんの姿を確認できないまま徐々にスピードを増す新幹線に向かって淋しく手を振った。



最後尾の車両が目の前を過ぎた時、

「圭悟ー」

反対側のホームで麻理さんか笑顔で手を振っている


麻理さん、、乗らなかったんだ。

急いで麻理さんの居る場所に向かった。
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