弊社の副社長に口説かれています
「ほらほら、ご飯、冷めちゃうわ! お腹が空いていると聞いて張り切っちゃったのよ、いっぱい食べてね!」
「あ、悪い、先に陽葵の服を着替えさせたい」
「服?」
希美が首を傾げた、陽葵も不思議に思う。
「陽葵も着替えたいって言ってたろ、俺のでよければ貸してやるわ」
「え、でも尚登くんの服なんか、私にはおっきすぎじゃ」
「そういうことなら、私のにする?」
社長夫人の衣服などどこのハイブランド品かと思うが、尚登は構わず2階への階段へ陽葵の手を引いて向かってしまう。
「袖や裾は丸めりゃなんとかなんだろ。とりあえず家に帰るまでだし、俺のなら返しに来る手間もない」
「そこまで毛嫌いする~?」
希美は頬を膨らませて怒るが、尚登は笑うばかりでさっさと2階へ上がった。2階にも立派な廊下があるのが家の広さを感じさせた。
尚登の部屋は、南側の一番奥だ。しばらく使われていなかったはずだが、そんなことはまったく感じさせない空気だった。シンプルだが高級感のある机とベッドが鎮座していた、ベッドメイキングもきちんとされているのは掃除が行き届いている証と判る。
尚登は奥にあるウォークインクローゼットへ陽葵をいざなった。
「中学ん時の体操着にするか?」
尚登が笑いながら引き出しを開ける。
「その頃なら、私の身長と同じくらいですか?」
「いや、もっとチビだったな、150なかったから」
「え、そんな人が、どうしてそこまで大きくなるんですか」
確かに男子は急激に伸びる者もいたが、どういうシステムなのだろう。
「なんだろうなあ、親は自由にさせ過ぎたなんて言うけど」
それは食欲だろうか、と確認する前にスウェットが引っ張り出された。
「これでいいか。今着てんのはどうする? 持って帰るなら今すぐ洗ってもらってもいいし」
「いえ、洗濯くらいはうちで……」
言ったが、男たちに散々触られたものだ、見ただけでそのことを思い出しそうでぞっとした。
「俺のおすすめは廃棄だけどな」
ぎらりと目と光らせての言葉に、陽葵はコクコクと頷く、そのとおりだ。
上衣の裾に手をかけた時、尚登と目が合う。
「──出てもらっていいですか?」
目を座らせて言うが、尚登は笑顔で応える。
「何を今さら」
確かに体の隅々まで散々見られている。同居当初の恥じらいはどこへやら、着替える様を見せるどころか、ブラジャーのホックまで止めてもらっているが、明るさなのか場所が違うせいなのかどうにも恥ずかしい。
「じゃあ、見ないでください」
「目を離したら、また陽葵がどっかに行っちまいそうだし」
「この家にいるならたくさんの目もあるから大丈夫では」
目を合わせることもできずに言うと、首を指先で撫でられた、保護テープのある場所だ。先ほども触れた場所だが、なにが違うのか、今はびくりと体が震えてしまう。
「尚──」
呼びかけた唇を唇で塞がれた、合わさり終わりではなかった、尚登の舌はすぐに唇を割り口内の奥深くまで探ってくる。
こんなところで──思うが拒絶などできない、尚登の肩に腕を回ししがみついていた。熱いキスを受けながら、死ななくてよかったと実感した、こうして尚登の愛を受けられるのだ。助けに来てくれたの尚登で本当によかった、容赦なく男たちを制裁する尚登に愛されていると実感できた。キスに応えれば呼吸が上がってくる、甘い声は懸命に堪えた。
尚登は陽葵の背を壁に押し当て、太ももに手をかけ持ち上げ体を密着させる。熱く感じる場所同士が当たり、陽葵は興奮した、やはりこういう行為は好きな人とやるものだと判る、しかし──。
「尚……今は、だめ……で……」
尚登の自宅で、食事を作って待ってくれているのだ、早く戻らなくてはならない。しかし尚登は諦めない。
「少しだけ……すぐ終わる」
熱く感じるその場所をさらにごりと押し当てられ、陽葵はむっとしてしまう。
「少しってなんですか! すぐ終わるって! とにかく今はダメです! 常識がないことをすると嫌いになりますよ!」
声を荒げた陽葵に驚いた、なによりその言葉に──陽葵の顔を覗き込むようにして微笑む。
「陽葵に嫌われるのは嫌だな」
「じゃあ、すぐに手を離してください!」
半ば抱っこするようになっていたその手を陽葵が叩けば、尚登はすぐに手の平を開く。
「着替えます! 出てください!」
「手伝うって」
「手伝ってもらうことは何もないです!」
尚登の背を押しウォークインクローゼットから追い出してしまう、そればかりは尚登がすんなり従ってくれたのは助かった。
「……まったくっ」
少しという言葉に腹が立ったのは事実だが、追い出さないと流されそうな自分が怖かった。こんなところで立ったままなどありえない、非常識だと怒鳴ったのは自分に対してだ、あの男たちと大差ないではないか。
ドキドキする心臓を感じながら、尚登が出してくれたスウェットを手にした、わずかに香る尚登の匂いを感じてその服に顔を埋めてしまう。
(……いいにおい、落ち着く)
洗濯の折なども香ってくると深呼吸してしまうのは内緒だった。
「……好き」
ため息交じりに呟いてから、ようやく着替えを始めた。
「あ、悪い、先に陽葵の服を着替えさせたい」
「服?」
希美が首を傾げた、陽葵も不思議に思う。
「陽葵も着替えたいって言ってたろ、俺のでよければ貸してやるわ」
「え、でも尚登くんの服なんか、私にはおっきすぎじゃ」
「そういうことなら、私のにする?」
社長夫人の衣服などどこのハイブランド品かと思うが、尚登は構わず2階への階段へ陽葵の手を引いて向かってしまう。
「袖や裾は丸めりゃなんとかなんだろ。とりあえず家に帰るまでだし、俺のなら返しに来る手間もない」
「そこまで毛嫌いする~?」
希美は頬を膨らませて怒るが、尚登は笑うばかりでさっさと2階へ上がった。2階にも立派な廊下があるのが家の広さを感じさせた。
尚登の部屋は、南側の一番奥だ。しばらく使われていなかったはずだが、そんなことはまったく感じさせない空気だった。シンプルだが高級感のある机とベッドが鎮座していた、ベッドメイキングもきちんとされているのは掃除が行き届いている証と判る。
尚登は奥にあるウォークインクローゼットへ陽葵をいざなった。
「中学ん時の体操着にするか?」
尚登が笑いながら引き出しを開ける。
「その頃なら、私の身長と同じくらいですか?」
「いや、もっとチビだったな、150なかったから」
「え、そんな人が、どうしてそこまで大きくなるんですか」
確かに男子は急激に伸びる者もいたが、どういうシステムなのだろう。
「なんだろうなあ、親は自由にさせ過ぎたなんて言うけど」
それは食欲だろうか、と確認する前にスウェットが引っ張り出された。
「これでいいか。今着てんのはどうする? 持って帰るなら今すぐ洗ってもらってもいいし」
「いえ、洗濯くらいはうちで……」
言ったが、男たちに散々触られたものだ、見ただけでそのことを思い出しそうでぞっとした。
「俺のおすすめは廃棄だけどな」
ぎらりと目と光らせての言葉に、陽葵はコクコクと頷く、そのとおりだ。
上衣の裾に手をかけた時、尚登と目が合う。
「──出てもらっていいですか?」
目を座らせて言うが、尚登は笑顔で応える。
「何を今さら」
確かに体の隅々まで散々見られている。同居当初の恥じらいはどこへやら、着替える様を見せるどころか、ブラジャーのホックまで止めてもらっているが、明るさなのか場所が違うせいなのかどうにも恥ずかしい。
「じゃあ、見ないでください」
「目を離したら、また陽葵がどっかに行っちまいそうだし」
「この家にいるならたくさんの目もあるから大丈夫では」
目を合わせることもできずに言うと、首を指先で撫でられた、保護テープのある場所だ。先ほども触れた場所だが、なにが違うのか、今はびくりと体が震えてしまう。
「尚──」
呼びかけた唇を唇で塞がれた、合わさり終わりではなかった、尚登の舌はすぐに唇を割り口内の奥深くまで探ってくる。
こんなところで──思うが拒絶などできない、尚登の肩に腕を回ししがみついていた。熱いキスを受けながら、死ななくてよかったと実感した、こうして尚登の愛を受けられるのだ。助けに来てくれたの尚登で本当によかった、容赦なく男たちを制裁する尚登に愛されていると実感できた。キスに応えれば呼吸が上がってくる、甘い声は懸命に堪えた。
尚登は陽葵の背を壁に押し当て、太ももに手をかけ持ち上げ体を密着させる。熱く感じる場所同士が当たり、陽葵は興奮した、やはりこういう行為は好きな人とやるものだと判る、しかし──。
「尚……今は、だめ……で……」
尚登の自宅で、食事を作って待ってくれているのだ、早く戻らなくてはならない。しかし尚登は諦めない。
「少しだけ……すぐ終わる」
熱く感じるその場所をさらにごりと押し当てられ、陽葵はむっとしてしまう。
「少しってなんですか! すぐ終わるって! とにかく今はダメです! 常識がないことをすると嫌いになりますよ!」
声を荒げた陽葵に驚いた、なによりその言葉に──陽葵の顔を覗き込むようにして微笑む。
「陽葵に嫌われるのは嫌だな」
「じゃあ、すぐに手を離してください!」
半ば抱っこするようになっていたその手を陽葵が叩けば、尚登はすぐに手の平を開く。
「着替えます! 出てください!」
「手伝うって」
「手伝ってもらうことは何もないです!」
尚登の背を押しウォークインクローゼットから追い出してしまう、そればかりは尚登がすんなり従ってくれたのは助かった。
「……まったくっ」
少しという言葉に腹が立ったのは事実だが、追い出さないと流されそうな自分が怖かった。こんなところで立ったままなどありえない、非常識だと怒鳴ったのは自分に対してだ、あの男たちと大差ないではないか。
ドキドキする心臓を感じながら、尚登が出してくれたスウェットを手にした、わずかに香る尚登の匂いを感じてその服に顔を埋めてしまう。
(……いいにおい、落ち着く)
洗濯の折なども香ってくると深呼吸してしまうのは内緒だった。
「……好き」
ため息交じりに呟いてから、ようやく着替えを始めた。