私を包む,不器用で甘い溺愛。
「ああ,それね。別に頼まれたって言うんじゃないわ。ただね,見たのよ私。坂本くんが白くて小さいレターを,あなたのカバンに差し込むところ。ああこれはいよいよねと思うじゃない?」

「そ,そうなの」



よりにもよって,目撃したのが紗ちゃんだなんて。

気恥ずかしいにも程がある。



「あの人も有栖も,全然戻ってこないんだもの。まさかのOKしたのかと思ったわ。でもその様子だと違うのね? さっき人気のない場所から他の人と出てきたの,窓から見てたわ」

「だって私……まだそうゆうのって,考え付かなくて……榛名くんはたまたま居合わせたのよ」

「まあ,そうよね。有栖ってば昔から私よりもずっと純情だったもの。無理に考えることもないわ」



背中をぽんっとさすられて,甚平くんの気持ちへの罪悪感が,少しだけ和らいだ。

うんと頷くその頭にも手が置かれ,すると紗ちゃんは思いに耽るように息を漏らす。


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