私を包む,不器用で甘い溺愛。
「にしても以外だわぁ。ほんとにあの三宅榛名と有栖が,あんなにも仲良しだなんて」
「……そうよねぇ。でも,ただ仲が良いんじゃないわ。榛名くんがよくしてくれるのよ。それに,どうして紗ちゃんは榛名くんをフルネームで呼ぶの?」
そんなこと滅多に無いじゃない。
それに,あのって……何?
「どうしてって,それだけ有名だからよ」
「ああ,彼,格好いいものね。ふふ,紗ちゃんもきっと好きでしょう? あぁいうビジュアルの男の子」
「そうね,見た目は。でも,なぁに言ってるの? 有栖。あれだけ近くにいて,この学校にいて,知らないわけじゃ無いんでしょう? あんまりお気楽言ってると,私の方が心配になっちゃうわ」
なんの,ことかしら?
私の困惑を他所に,紗ちゃんは私の手を引く。
「ほら,口開けて。カバンが膨らんでるってことは,おべんとまだなんでしょ? 唐揚げ取っておいたのよ」
自分の席まで歩いた紗ちゃんに,私は雛鳥の如く口を開けた。
「ふふ,紗ちゃんってば,ほんとにやさしい」
「うるさいわね,いいのよそうゆうの。ほら,もう授業が始まるわ」
榛名くんの話題なんてすっかり忘れて,私は紗ちゃんの照れ隠しにくすくすと笑う。
「はあい」
そんな返事で,私は自分の席へと戻った。