私を包む,不器用で甘い溺愛。
頷きそうになりながらも,私はその言葉を飲み込んだ。
榛名くんには確か……これからって言われなかったかしら。
たゆんと眉が下がる。
「あの……いつ,という約束はしてないんです。明日も明後日も……多分……?」
私の言葉に,甚平くんは驚いたような反応をした。
「1日くらい都合だって断れないの? 仲が良いってんなら,強制な訳じゃないだろ? ……あっ俺も別に,強制っていう訳じゃねぇですケド」
私はぱちぱちと瞬く。
確かに,そうだわ。
約束はしたけれど,1日位断ったって,何も悪くないはずだもの。
「あ,じゃあ私……ついでに榛名くんに聞いてみます」
ぺこりと会釈をして,かける。
いけないわ,これ以上は待たせ過ぎちゃうもの。
「後輩の……榛名"くん"……? それに,榛名ってまさか,"あの"……? ……だめだ!!! 来栖さん,待って……!!!!」
……?
甚平くんが何かを言っている。
でも,今更戻るのも……
後で聞いても,きっと遅くはないよね……?
だって,同じクラスなんだもの……
私は後ろ髪引かれる思いをしながらも,一直線に小走りをした。