私を包む,不器用で甘い溺愛。







「だめ」

「えっ?」




1つだけ置かれた古いベンチの上。

早速尋ねてみたところ,そんな短い返事が返ってきた。



「約束しましたよね,ありす」

「そうだけど…………うん,まぁいいや。お友達って言われても,私も急には戸惑っちゃうから」



甚平くんにはとても悪いと思う。

けれどそんな風に思う私は,先程のクラスメートの視線を思い出していた。

時間の問題だとか,既にそうだとか。

そう思われてしまうんじゃないかって,少し居たたまれなくなる。

本当はああいうお誘いも断った方がいいのかしら。

経験がなく,正解なんて分からない。

明日の彼の気持ちも私の気持ちも分からないのに……

でも,今のままでは思わせ振りなんじゃなんて自意識過剰な思いまで芽生えてる。



「そうですよ,だから友達なんてのもやめておきましょう」



そんなばっさりとした榛名くんに,私が考えすぎなのねと,私はお弁当を開いた。

なるようになるわと,榛名くんの存在は逆にちょうど良かったと思う。

でも,言い過ぎるのも良くないわ。



「ふふ,もう,榛名くん。甚平くんはいい人なのよ? そんなこと言わないで」

「……すみません」



悪気がないのは分かっているから,強くは咎めない。

だって榛名くんはそんな子じゃないもの。

榛名くんは直ぐに目線をそらして,小さく謝った。

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