私を包む,不器用で甘い溺愛。
ん,と伸ばされる長い腕。
さっきとは違う意味だと言う事だけは理解することが出来る。
「握手,しましょう。一先ず俺とお友達になって下さい。今までは俺から話しかけるばっかりで,微妙な関係だったから」
「え」
「だめ,かな?」
だめなんて,そんなわけがない。
「あ,まあぁ,どうしよう。私,勝手に甚平くんの事はお友達なんだと思って,ました」
「なっならいいよ!! そのままで! 良かった。じゃあ,握手はおあずけにしよう」
にこりと笑うこの人の笑顔は,何だかとても,安心する。
「じゃあ,フラれた俺は潔く戻るので,またね」
「あ,うん……ごめんね」
「謝んないでよ,俺まだ諦めてないよ」
ひらっと手を振って,彼は去った。
「お~やりますね~」
びくりと肩が震える。
それはひっそりとしたこんな場所で,聞こえるはずの無いものだ。