私を包む,不器用で甘い溺愛。
「……だれ」
「あら,誰かしら。でも今確かに,不自然に……」
出るに出れず,本棚の細い背に背中を合わせた。
ぎゅっと抱えた本のページが,私の汗でしなしなにならないかとこんな時にも気になってしまう。
動いたら,見つかる。
動かなくても,見つかる。
誰かいると気付いても,一切焦ることの無い2人。
こんな会話,もし気付くのが遅ければそんな行為,2人には全く恥ずかしくもなんとも無いんだってことを,私はじっくり頭に馴染ませた。
「……っ?!! あり……」
「? ええっ?」
私がそろりと気配を感じて見上げたとき,同時に,不審に思った榛名くんが私を覗く。
その突然の焦りように,私がここにいてはいけなかった事だけが理解できた。
同じ様に動揺していることを隠さなくてはいけないと,私は何故かそんなことを考える。
こなつちゃんが嬉しそう,と言うよりわくわくと楽しそうな声を出したりゆうだけが,分からない。
けど,そんな事に疑問を抱くだけの余裕も,今の私にはない。
見てはいけないものを見てしまった。