私を包む,不器用で甘い溺愛。
こんなに感情を持て余すのは,生まれて初めてのこと。
何が起きたのか,なんだったのか。
たったあれだけの時間で脳に投げ込まれた情報は多く,なのに何一つ分からない。
どうしてこんなにぐるぐるとした泣きそうな気持ちになるのかも分からないし,榛名くんの顔が頭から離れない。
明るくない榛名くん。
優しくない榛名くん。
『あんなに尊大でふてぶてしくて敵なしだったあなたが』
ふてぶてしいと言うのは少し分かる。
だけど……彼のひょうきんさは,あんな風に言われるものかしら。
あの表現からは,そんな明るさは感じられない。
にも関わらず,榛名くんは否定しなかったし。
一体,2人は何の話をしていたの……?!
心臓がぎゅっと痛む程の心拍数。
どくどくと,暫くの間収まることなく続いていた。