私を包む,不器用で甘い溺愛。

初めて見る,私への罪悪感。

そして,最後に強いもの言い。

いつも自分一人閉じ籠って,決してそんな余裕のある人では無かったのに。

ぎりりと長い爪が肌に刺さった。

こんなにも泣いてしまいそうな気持ちを押し殺して,はっと鼻で笑ってやる。



「私はそれであなたを揺さぶっているの。それをどうこう指図する権利も力も,あなたにはないわ,榛名。これでも答えを導けない先輩に,分かるまであなたという人を教えたっていいのよ?」



そんなことはしない。

いや,出来るはずがないんだ,私にはもう。

今すぐ先輩を追いかけて,抱き締めて。

無理矢理にだってキスで奪ってしまいたいんでしょう。

でも,こんなことをする私の為だけに必死に耐えてるんでしょう?

見限られるのが怖いから。

恐ろしくて理解できないと言う瞳を見たくないから。

どう頑張っても,恥じてすらいる過去の行い全てを説明することなんてできないから。

あぁ,羨ましいわ,先輩。

あんなに校内を賑わせている,光って仕方がないこの榛名に。

そんなことすら知らないあなたが,全てのものの口を閉ざさせてまで大事にされてるんだから。

羨ましい,羨ましいの。

あなただけが,榛名に初めて求められている。



「次同じようなことをしたら,俺は絶対に君を許さない」



私はまた,1つ彼に嫌われるのに。

榛名ってば,ほんとサイテーよ,知ってたけど。

黙って微笑む私から,榛名が離れていく。

本当に,私と同じで,サイテーよ。


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