私を包む,不器用で甘い溺愛。




「……いい加減,有栖の為を騙るのはよして。全部自分のためでしょう。有栖をにっくき榛名くんにとられないため。だったら,最初からこうはっきり言えばいいのよ"榛名から来栖さんを引き離すのを手伝ってくれ"ってね! お断りですけど!」



それをまぁここまでぐだぐだと。

聞いてなかった大半の話など,無くても理解できるというのに。

流石にそんなあたしの態度に腹が立ったのか,ムカッと直ぐに顔に出る,限りなくあほな甚平。

その感情を否定したりなんかしないから,もっと良く考えてから怒りなさいよ。

何をいうのかと思えば,私の倍位の音を立てて机に両手をつく。



「あーくそ! 君はどうも俺のことがひどく気に入らないと見える! どうしてかは知らないけど,俺が一体何をしたって言うんだ。それに,2人を引き離すのはお断りだって?! 本気で言っているのか!?」



キーンと響く大声を,目の前で聞く。

周りに散々ポーズを取っている甚平の真似をして,私はわざと真顔で耳を指でふさいだ。



「そうよ,大体あなた,榛名くんの何を知っているの?」

「なにって……そりゃあ知ってるさ! 俺はあいつの被害になった女子を,この目で何人も見てきたんだからな!」

「そう,じゃあその日を境にあなたの視力は無くなったのね。今の彼を見て? どこに女の影がある? いつだって側にいるのは有栖1人よ」

「だからなんだって? 更生しましたってってのを信じろと? 君はそれでいいってのか? 人間過去は変えられない!」



君はそれでいいのか,ですって?

だから,そういうポーズが気に入らないの。
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