私を包む,不器用で甘い溺愛。


「ところでありす,お昼はもう済ませたんですか?」

「あ,忘れていたわ。本を読んでいて,甚平くんのお手紙にも気付くのが遅れてしまったから……まだ食べていないの。でももう遅いわね」



久しぶりに母が作ってくれたのに,食べるのは放課後になってしまいそう。

お夕飯,ちゃんとお腹にはいるかしら……

甚平くんからのお手紙は,スクールバックのチャックを少しだけ開けて挟んであった。

きっと,私が休憩前にトイレへと向かった時にでも入れたんだと思う。

それこそ,お弁当箱を取り出そうとした時に初めて見つけたのだから,随分待たせてしまったと思った。

来ないと思われたって仕方がない。

机横のスクールバックに,なんて,余程運やタイミングが良くない限り,誰に見られたっておかしくないのに……

甚平くん,私のこと,本当に本気なんだわ……

私,お断りして良かったのかしら。

だってあんなに優しくて誠実な人,この先いないのかもしれないのに……

考える時間くらい貰っても,良かったんじゃない?


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