私を包む,不器用で甘い溺愛。
「甚平くん」
「ん?」
車道側を選んで歩く甚平くんは,私を大切そうに見返した。
チクリと胸が痛んで,だめよと自分に首を振る。
「ごめんなさい,私……榛名くんのことが,好き,みたい,なの。だからもう,こんな風に一緒に帰ったりは出来ないわ。……一杯伝えてくれたのに……ごめんね」
私,甚平くんには謝ってばっかり。
本音がするすると出てきてしまうの,おかしいでしょう?
きっと彼がどんな言葉も受け入れてくれるって,分かってるからなんだわ,私。
チラリもう一度見上げると,あぁほら,また傷付いた顔をさせている。
私,あなたのこと好きになれたら良かったね。
甚平くんはきっと,誰より私を大事にしてくれた。
時に対立しても,きっと彼は私を受け入れてくれたって思えるの。
「何でなんだ,どうして……やっぱりおかしいよ来栖さん。考え直してよ! こんなの,そんなのってない。不健全だ!」
「お願い,前も言ったと思うけど……榛名くんのこと,そんな風に言わないで」
甚平くんってば,自分がフラれることよりも,私が榛名くんに思いを寄せる方が気がかりみたい。
でも榛名くんは,本当にひどい人なんかじゃないのよ。
「来栖さん……」
「来栖だとぉ?」
?!
突然の割り込み,それも知らない声と,不機嫌な声色。
私達は揃って,思い切り振り向いた。