私を包む,不器用で甘い溺愛。



「ちょ,ちょっとほんとに何してんのよたかし! やめて,さっきから何してるの!? 榛名,怪我,みせ……」

「榛名ってのは,俺だけど?」



心配に瞳を揺らめかせ,ようやくこなつちゃんが彼のそばから私達の下へ動いてこようとする。

そんなこなつちゃんを遮って,榛名くんは自力で突然に立ち上がった。



「ちょっと動いちゃ……! だめ! 榛名くん,座って! 脳に影響が…」



あったらどうするの。

あんな固いもので勢いよく殴られたのよ?!

それも頭を,何があるか分からないじゃない。

万が一って。

ぐらぐらするんでしょ,その頭。

押さえてるの見れば分かるのよ。

私にまたあの塊が向かないようにって,そうしてくれてるのは分かった。

でも……!



「大丈夫だよ,ありす」



敬語が取れた。


いつもなら,大丈夫ですよって,そういう筈なのに。

大人な微笑みにどきりとする。



「怯えてるよ,たかしくん。ありすと……こなつがね」



ふてぶてしく,誰より不遜に笑う榛名くん。

その口調はいつも通りからかっているようにさえ聞こえて。
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