私を包む,不器用で甘い溺愛。
驚いた彼はこなつちゃんを振り返った。
「もうやめて,私,幼馴染みだからってちょっと愚痴っただけじゃない! いつものことでしょ?!」
止まったかと思ったのもつかの間。
その必死のこなつちゃんの言葉が彼を煽ったようで。
「いつもの,こと……そうだ,いつもだった。何しても振り返らない,周りには女だらけ。そしてとうとう……こなつを捨てた!」
「違っ待ってよ! 愚痴だって,そう言ってるでしょ?! ちょっと大袈裟に悪く言ったの,やめて,やめてってば!」
本気で望んでないことが分かる。
大きな彼に,彼女の力は敵わない。
こなつちゃんのように勇敢に飛びかかることも出来ない私も,遅れて止めようと動いた甚平くんも間に合わなくて。
痛みに気を取られた榛名くんが,更に頭と肩を2回殴られて────倒れた。
「くそ! 榛名!」
なんとかたかしという人物を押さえた甚平くんが,なおももがく彼を押さえながらも,必死に榛名くんに声をかける。
私は,そんな甚平くんとは違い,榛名くんのそばにへたりこむしかない。
なにが,なにが起きたの……?!!!!
「く,来栖さん! 今はそんな場合じゃ……! 榛名を優先して! 来栖さん……有栖!!」
はっと意識が覚醒した。