私を包む,不器用で甘い溺愛。
「ありすは本を読んでいるうちに全て忘れてしまいそうですね」
「まあ! 失礼よ,榛名くん。私には紗ちゃんと言うお友だちがいるんだから」
今日は,その……
他クラスの友達に借り物をしに行くとかで,一緒に食べる約束をしていなかっただけなんだから。
「そうですか,ごめんなさい。でも,だから……提案なんですけど,お昼,これからこの辺りで一緒に食べませんか?」
「これからって……明日からってこと?」
「はい,俺もありすといられるなら楽しいですし。何よりここ,とってもいい場所じゃありません? 1人だと寂しいな~」
クスクスと笑って提案したかと思えば,大きな背を丸めて,上目に見つめて見せる。
「わっ私は……いいけど……紗ちゃんに聞いてみないことには分からないわ。いつも一緒に食べてるんだもの。断られたらそれまで,だからね?」
だから,そんな顔で私を見ないで。
そう願いを込めて念を押した。
「はい,もちろんです」
「じゃあ,私……こっちだから」
「そうですね。じゃあまた,ありす」
「ええ,ばいばい」
紗ちゃん,1人でお昼食べたのかしら。
進行方向を決めながら,私は今更そんなことを考える。